楽音堂のジャズ&古本日記

ジャズ名盤、レア盤、古本などを「メルカリ」で販売してます。

幻のジャズピアニス/Lowell Davidson

f:id:RAKUONDOU:20220112051146j:image

オーネット・コールマンの紹介によりデビューしたピアニスト。ノー・オーディションで作品を吹き込ませるESPも凄いが、それに相対すデヴィッドソンはもっと凄い。ゲイリー・ピーコック、ミルフォード・グレイヴスとのトリオで放たれる音は力強くも美しく色褪せない。


冒頭の「“L”」から、もがき苦しむようなピアノの音に包まれます。リズムは断続的で、つまづきながらも前に進もうとする意志が感じられる曲。
続く「Stately 1」は、Paul Bleyを思わせる曲調。リズムのつまづき加減は変わりませんが、導入部では、なかなかリリカルなピアノを聴くことが出来ます。演奏は徐々に熱気を帯び、ピアノの音も跳ね上がってきます。10分以上の作品ですが、ハラハラとした感覚がどこまでも続き、冗漫な印象は受けません。
3曲目「Dunce」は、ドラムスが先導し、ピアノ、ベースを煽り立てるので、割と前進感がある曲。「Ad Hoc」は、繰り返されるテーマが次第に拡散し、ピアノがひっきりなしに何らかのパッセージを。そこに、 Peacockのベースが別方向から切り込んできます。次の瞬間、珍しくピアノは停止し、思索的なベースソロ、Gravesのドラムソロへと展開していきます。Gravesのドラムスは、ドタバタながらも、もたつかず、不安定なパルスを果てしなく供給。12分以上という長さを感じさせない、緊迫感に満ちた曲に仕上がっています。
ラスト「Strong Tears」は、自由な展開の中で、ある種の美しさを追及しようとする3人の姿勢を感じる曲。


本作は時代と格闘し、突破口を見出そうともがきながら、ある方向への昇華を果たしたミュージシャンたちの戦いの記録である。尚、Davidsonは、49歳の若さで病死し、正式な録音はこの作品のみ。

■メンバー
LOWELL DAVIDSON(p)
GARY PEACOCK(b)
MILFORD GRAVES(ds)
■収録曲
1."L"
2.STATELEY
3.DUNCE
4.AD HOC
5.STRONG TEARS

Lowell Davidson Trio

https://item.mercari.com/jp/m77604257732